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2020.7.15不妊症に悩む方々にとって漢方薬が果たす役割

梅川 哲朗

OHGA Pharmacy LifeStream 漢方薬梅川 哲朗

不妊症に悩む方々にとって漢方薬が果たす役割

街を歩いていると、時々、漢方薬局が掲げた看板の中に「子宝相談」や「不妊相談」といった大きな文字を目にすることがあります




不妊に悩む方々にとって漢方医学では何ができるのでしょうか?

前置きしておきますと、「不妊症」に漢方薬を活用することの意義は、服用することで子供を授かれるという事では決してありません。
漢方医学の分野では、病院での西洋医学による治療ではなかなか行き届くことのできない、ひとりひとりの体質に応じた妊娠しやすい体づくりをすることが出来るんです。




「不妊症」とは?

「不妊症」とは一般的に、赤ちゃんを授かりたいと願う男女が継続的に夫婦生活を営んでいるにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態のことを定義としています。
しかしながら結婚して数年が経ち子供ができなくても、お互いに健康体で、病院に行ってまで子供を望んでいなければ、そのご夫婦を不妊症と呼ぶことはありません。
思うように授かることができずに、病院にかかってまで子供が欲しいと考えた人につけられた診断名や症状名が、不妊症となるのです。
そのことからも「不妊症」は病気としてではなく症候群として、またその人の体質だったり、身体の状態として、捉えるべきだということが考えられています。




不妊症は女性だけの問題ではない

不妊症の原因としての主なものには、
・排卵できない「排卵障害」
・卵管が狭く詰まっていて受精卵が子宮に届かない「卵管障害」
・精子が子宮に入るまでに障害がある「頸管障害」
・卵子が育たなかったり受精卵が着床しない「子宮障害」
・男性の精子の数と運動率に問題がある「造精機能障害」
・加齢による「卵子や精子の老化」

などが上げられています。
また、全体の約4分の1の原因が男性にあると言われている中で、不妊症が女性だけの問題ではないということは紛れもない事実です。
男性は、この問題を絶対に、女性任せにすることなく、必ず協力し合いながら治療に臨むことを忘れてはいけません。

病院ではその治療方法として、ホルモン療法や外科的な処置、そして更に進んで、人工授精や体外受精、顕微授精などの高度生殖補助医療(ATR)を施していきます。
それらの治療においてもなお、昨今の晩婚化もあって、その成功率は決して高いものとは言えず、原因不明とされてしまうケースも多々あります。





漢方療養で妊娠しやすい体づくりを

漢方療法では、こうした卵巣や子宮などの器質的な原因を生んでいる体質の改善を図り、その人それぞれの状態に合った妊娠しやすい体づくりのサポートを行っていきます。
加齢による卵巣機能の低下や、冷えやストレスからくるものなど、病院では不妊の原因がよく分からないケースも、漢方ならアプローチをすることが可能になってきます。

漢方薬による不妊対策の最大のメリットは、不妊・未妊でお悩みのすべての方の、自然なホルモンの分泌を無理なく最大限に活発にして、心身の状態を整え、よい卵子、よい受精卵、着床しやすい子宮内膜を作り上げることが出来る事です。
漢方薬を体験された方の中には「病院の治療も漢方薬も続かずにやめてしまったけど、その後すぐに妊娠する事ができたので、あの時に飲んで体調が整った漢方薬が効いたのかも」と後日報告に来られる方も少なくありません。

こうした母体づくりができていない状態で病院での治療を受けても、妊娠の成功率はなかなか思うようには上がりません。
漢方薬で体を十分に整えてから病院の治療へと進んだり、病院の最初の検査で体の状態が分かったらすぐに漢方で整える事と併行して病院での取り組みにチャレンジすることで、妊娠の成功率は確実にアップするものと思われます。

もし、夫婦ともに病院やクリニック等で検査を受けてみても、お互いに特に異常はなく原因が分からずに悩んでいる方や、高額な費用がかかる上に、終わりの見えない不妊治療に苦しんでいる方がいらっしゃったら、一度、期間を決めて、このような漢方療法を受けてみられるのも選択肢の一つではないでしょうか。




授かった人も、授からなかった人も、ずっとフォローしていくこと

不妊症の治療は、「妊娠した」ということがゴールではありません。妊娠中も母子ともに健康な状態を保ち、無事元気な赤ちゃんが生まれる事を最終的な目標としています。
漢方相談では、お母さんの産後の肥立ちなども含めて、その先のこともずっとフォローしていくことを大切に考えています。

そしてこれは本当につらい話になるのですが、不妊治療に望みをつないで取り組んでおられる方にとって、周りにいる人の何気ない言葉や行動が大きな心の傷を生んでしまいます。

例えば、一緒に不妊治療を始めた友人が先に妊娠して喜んで何度も連絡をして来たりとか、
知らなかったとはいえ不用意に「子供さんはまだなの?」と何度か尋ねてみたりとか、その人の前で子供の自慢話や子育ての愚痴をずっとしゃべっていたりとか、「年齢的に厳しいよね」と簡単に片づけるような言葉を吐いてしまったりとか...。

不妊治療を続けておられる方や、諸事情により止むを得ず治療を諦めてしまった方にとっては、友人や親族の赤ちゃんや子供、街角やテレビで見る幼い子の姿、毎年送られてくる年賀状の子供の写真などを見る事でさえ、そのことを思い出して胸が締め付けられるのです。

これは二人目以降の不妊に悩む方にとっても、不妊治療を経験したことがない子供が授からなかったご夫婦にとっても同様です。

みなさんも、もし、周りにこうした方々がいることに気づいたら、どんな言葉や行動がその方を傷つけてしまうのか、ぜひ想像しながら、何かしら相手を思いやって頂けると幸いです。


私達は日々漢方相談に携わる者として、どこまで力になれるかは分かりませんが、プライバシーをしっかりと守りながら、不妊治療を終える決断に至るまで悩んで頑張ってこられたご夫婦のその先も、心と体の面で少しでも寄り添ってサポートできればと思っております。




梅川 哲朗

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梅川 哲朗 (登録販売者・九州中医薬研究会会員・国際中医臨床薬膳師)
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