前回は、なかなか治まらない咳が「どんな状況の時に出ているのか」、またその「主な原因として考えられることは何か」ということについて、いくつか事例をあげてみました。


関連リンク：《前回投稿記事》『突然の咳や長引く咳、なかなか治らない咳の考えられる要因～その1.～』


その他にも、「咳はどれくらい続いているのか」、「空咳なのか痰がからむのか」、「痰の色や咳の音はどうか」といったことなども、咳の原因を探る上での大きな手掛かりとなります。

そこで今回は、症状があらわれている期間や痰の状態等から、考えられる咳の原因について、加えて、様々な咳への対策についての話をしてみたいと思います。

咳が続く期間が3週間未満のものは、「急性咳嗽」と言われていて、その主な原因となっているものには、急性の呼吸器の感染症があげられます。
前回の話しに出てきた〝感染後咳嗽″などもこちらの「急性咳嗽」に当てはまります。
感染症による咳は、一般的に数週間から1か月前後で、時間とともに緩和されていきます。

また、それ以上に続く咳は、「遷延(せんえん)性咳嗽」(3～8週間)や、「慢性咳嗽」(8週間以上)と言われていて、喘息やアトピー咳嗽、あるいは、タバコ・胃酸逆流・後鼻漏による気管支炎など、何らかの疾患が原因だと考えられています。

咳が続いている期間が長ければ長いほど、感染症が原因である可能性は低くなってきます。

それから、痰の有無や、咳のしかた、その音などをもとに、考えられる原因もあります。

咳に痰を伴わない空咳は「乾性咳嗽」と言われていて、〝コンコン″といったような乾いた感じの音の咳で、気管や肺に炎症が起こっている状態が推測されます。

「乾性咳嗽」の主な原因には、咳喘息やアトピー咳嗽、タバコや外気などによる刺激などがありますが、まれに、一部の降圧剤等の薬の副作用や、心因性によるものもあります。


これに対し、痰を伴って〝ゴホゴホ″というやや湿った音で出る咳を「湿性咳嗽」と言って、侵入してきた細菌やウイルス、異物などから気道を守るため、普段より多く出てきた気管支粘膜の分泌液が、病原体をくるんで痰となり、それを外に出そうとしている反応の咳です。

「湿性咳嗽」の主な原因には、風邪やインフルエンザなどによる急性の感染症や、気管支炎などがあげられますが、〝ん、ん～っ″といった咳払いのような音で、痰がからむ咳をする人は、副鼻腔炎などが原因となり、鼻水が喉の奥に落ちているケースもあります。

さらに、痰の色や状態にも、長引く咳の原因を探るためのヒントが隠れています。

〝無色透明や白色のやや粘っこい痰″が出る咳は、ほこりやタバコによる刺激や、(細菌ではない)ウイルスの病原体などが原因となっている可能性が考えられます。

〝黄色や緑っぽいやや濃い色の痰″が出る咳は、細菌の感染により、気管支などの呼吸器系に強い炎症が生じていることが懸念されます。

それから、〝朝起きてすぐの痰には濃い色がついているが、その後は白っぽい″という人は、寝ている間に、副鼻腔炎などの病気が原因で後鼻漏の症状が起きて、先にも述べたように、鼻汁が喉に落ちて痰になって、咳を誘発している場合も多々あります。


時には、空咳が出たり、また痰がからんだりと、短いサイクルの中で、咳の状態がコロコロと変わり、いま出ている咳の原因が何なのか、なかなか把握しずらいこともよくありますが、
乾いた咳の数日後に、白っぽいさらさらの痰が出はじめて、その後、黄色っぽい濃い色の痰になり、また再び白い痰になるなどの変化は、体がウイルスや細菌等と戦って、だんだんと回復してきている状態のあらわれでもあります。

今までに話してきた〝長引く咳″の正体を知るための、様々な手掛かりを参考に、それぞれの思い当たる原因に応じた早めの対策が、さらなる重症化を防ぐ大きなカギとなります。

病院の検査で何らかの病気がその咳の原因だと判明して、薬などで治療を行う場合を除き、一般的によく言われている咳への対策には、以下のようなものがあります。

◆「屋内の湿度を保つなど、喉を乾燥から守る」

　乾燥した空気は、気道の粘膜を刺激したり、ウイルス等が活性化する環境をつくったりと、咳を誘発してしまう大きな原因となります。
室内では、加湿器を使ったり、あえて洗濯物を部屋干しにしたりして、湿度が保てる状況をつくり、こまめな水分補給やのど飴、濡れマスク等の活用で喉を乾燥から守りましょう。

◆「なるべく温かい飲み物をとるようにする」

　水分の補給は乾燥対策にも効果的ですが、よく痰がからむ咳が出るようなら、できるだけ温かい飲み物をとるようにしましょう。硬くなった痰を軟らかくして排出しやすくしてくれますし、温めることで、気管も広がり呼吸が楽になって、咳も止まりやすくなります。

◆「生活のリズムを整え、ストレスの発散を心がける」

　不摂生な生活やストレスは自律神経のバランスを乱し、病院の検査でもなかなか原因が見つからない、心因性の咳などを引き起こすきっかけとなります。
　なるべく生活習慣を整えるよう努め、十分な睡眠をとり、ストレス発散を心がけましょう。


これ以外にも、空気中のほこりを吸い込まぬようこまめな掃除をすること、タバコや辛い物、冷気などの喉や体への刺激物は避けること、気道を狭める姿勢に気をつけること等々、日頃から意識して行動すればすぐに取り組める、咳への予防や対策がいくつかあげられます。

ただ、うがいなどのやり過ぎは、正常な細菌叢まで殺菌して洗い流してしまったり、気道の粘膜を傷つけてしまったりするので、状況に応じて水などで適度に行いましょう。

最後に、長引く咳の色んな特徴を把握した上で、タイプに応じた漢方薬の活用も効果的です。

たとえば、ここではその詳細な説明は省きますが、ごく一例をあげてみますと

◎乾燥やタバコの煙など刺激に過敏に反応して出る咳なら
「滋陰降火湯」「麦門冬湯」

◎口渇や熱感を感じて、粘っこい痰がからむなら
「麻杏甘石湯」「清肺湯」「五虎湯」

◎突然、こみ上げてくるように咳が出て、時には声がれもあれば
「麦門冬湯」「半夏厚朴湯」

◎ストレスや自律神経の乱れによる心因性の咳なら
「小柴胡湯」「竹茹温胆湯」「滋陰至宝湯」

などの代表的な処方が、様々なケースにもとづいて、その効果を発揮しています。

細かい咳の原因や、それぞれの体質に合わせて対応できるのが、漢方薬の強みです。


なかなか治まらない咳は、ほんとうに憂鬱ですよね。

出はじめた咳に対して、毎回その度に、抑え込む処置を繰り返すだけでなく、そこにどんな原因があるのかをしっかりと考察して、少しでも早く適切な対策をとっていきましょう。

気になる症状の改善や緩和に適した、漢方薬や健康食品を、きちんとセレクトするために、カウンセリングにはしっかりと時間をかけて対応させて頂きます。
さらに症状の根本的な原因となる部分を認識するために、陰陽五行体質判定システム（税込1,000円）の活用による漢方カウンセリングも、ご希望に応じて行っております。

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