コラムCOLUMN
コロナ禍で、普段以上に咳エチケットに敏感な中、急に出てしまう咳やスッキリ止まらない咳に悩まされている人はいませんか?
咳は医療機関や薬局などで相談される症状の中でも、最も多い訴えの一つです。
とりあえず、対症療法としての咳止めなどを服用している間はよくても、時間がたったり、環境が変わったりすると、また咳が出はじめることがある人は、たとえ軽めの咳だとしても、改めてその原因の把握に努めることが大切です。
どんな状況からくる咳か
まずは、どんな状況が影響してその咳が引き起こされているのか、考えられる要因について、いくつか例をあげてみたいと思います。
◆『風邪やコロナにかかった後に長引く咳』
こうした咳は「感染後咳嗽(がいそう)」と呼ばれていて、感染症が治癒した後も、まだ咳を起こす神経が活性化されたままの状態が続いていることが、その主な原因となっています。
しばらくは軽い刺激でも咳が出ますが、徐々に気道の粘膜が修復されていくことで、数週間から1か月前後で、自然に咳が治まってきます。
ただし、感染後に、「咳喘息」などを誘発しているケースもあるので注意が必要です。
◆『冷たい空気や煙のある所に近づいたり、寒暖差のある所に行くと出る咳』
『歌を歌ったり、長く喋っていたりすると出てしまう咳』
よくスーパーなどで、冷凍食品のコーナーの近くに行くと咳が出る人、少し離れていても、わずかなタバコや焼肉の煙などに反応して咳が出る人、カラオケで何曲か歌ったり、長く喋っていたりすると、必ず途中で咳き込んでしまう人などは、気道過敏の亢進が原因で起こる「咳喘息」や、「アトピー咳嗽」の可能性が考えられます。
どちらによる症状かは非常に見分けにくいのですが、「アトピー咳嗽」の方は、咳受容体の亢進が原因で、普段は反応しないわずかな刺激でも咳が起こり、喉に掻痒感が目立ちます。
その治療には、咳喘息の治療に用いられる気管支拡張剤は効果がなく、抗ヒスタミン薬等のアレルギーの薬が効果的だと言われています。
また、会話中に出る咳などは、その他に色んな病気が原因になっていることも推測されます。
◆『夜になると出る咳・横になると(寝ると)出る咳』
夜になると、なぜかよく出るという咳には、呼吸や体温を調節する〝自律神経のバランス″が大きく関与していることが疑われます。
自律神経には、日中に優位な「交感神経」と、夜に優位になる「副交感神経」があります。
「交感神経」が、活発的な昼間に必要な酸素を多く取り込むために、気管支を拡張するのに対して、「副交感神経」は、活動量が少なくなる夜に気管支を収縮して狭くしてしまいます。
さらに、横になってしまうことで、そこに気管支内の分泌物が入り込んで、刺激をしたり、もっと気管支を狭める状態となり、咳が出やすくなってしまいます。
重ねて、夜間と日中の寒暖差による喉への刺激も、この咳の大きな要因の1つとなります。
◆『過剰なストレスや緊張が続いたりすると出る咳』
体には何も異常がないのに、咳が出てなかなか治らない人は、長く続いているストレスや、過剰なストレスなどが、原因となっているケースもよくあります。
この咳は、「心因性咳嗽」と呼ばれており、特徴としてはやや渇いた咳で、何かに集中している時や、熟睡している時には、ほとんど出ることがありません。
過度な緊張やストレスなどにより、乱れた自律神経が、脳の咳中枢や気道の粘膜を刺激することで咳を誘発しており、環境の変化や季節の変わり目などが、そのきっかけになりやすいと言われています。
適度な運動や、十分な睡眠・休養などによるストレスの緩和が、改善への近道となります。
◆『電車やバスなどの乗り物に乗ってしばらくすると出る咳』
電車やバスなどに乗っていると咳が出はじめる人は、エアコンによる寒暖差、車内のほこり、空気の乾燥等で、気道が反応して炎症を起こし、過敏になったり狭くなったりしたことで、咳が出ているものと考察されます。
これがもし頻繁に起こるようなら、すでに「咳喘息」になっていることも危惧されます。
それ以外にも、「このコロナ禍で周りにたくさんの人がいる中、咳込んだらどうしょう....。」というプレッシャーや緊張によるストレスが、咳の原因になっている可能性もあります。
◆『食事をした後や朝起きてすぐ、または、前かがみや猫背になっている時に出る咳』
上記のような状況の時によく出る咳は、「逆流性食道炎」等の症状で上がってきた胃酸が、食道の下部にある神経を刺激したり、さらに、その上にある喉を直接刺激して、起きている可能性が考えられ、胸やけなどの症状を伴うこともあります。
治療には食生活や日頃の姿勢の改善、胃酸分泌を抑制する薬の服用などが求められます。
◆『時々、鼻の奥に流れるような感じの痰を伴う咳』
副鼻腔炎や後鼻漏などの症状がきっかけとなって、鼻汁が喉の方に流れ落ちてしまうことにより、気道を刺激して起こる咳で、「副鼻腔気管支症候群」とも言われています。
副鼻腔気管支症候群は、気管の表面にある痰や異物を運び出す繊毛の、何らかの異常が原因で起こるとも考えられており、1日を通してずっと咳が出ることもあります。
やや期間を要しますが、まずは抗生剤などを中心とした、鼻の症状の治療が必要となります。
原因は複数かも?思い当たることがあれば早めの対策を
他にも咳には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎、肺結核、肺がんなどの病気の影響によって起こっているものや、薬の副作用によるものなど、たくさんの考えられる原因が存在します。
そしてさらに、いま起きている長引く咳には、決して1つではなく、いくつかの状況による影響や、複数の疾患が関わっている可能性も十分に考えられます。
もし、今まで述べてきたような〝咳が出る時の状況″に、「どれもこれも思い当たる、あるいは、当てはまるような気がして、原因が何なのかはっきり分からない」と感じるようなら、その全ての状況に対し、症状の緩和や改善に導く対策を、早めに行っていくことが重要です。
次回は続けて、その咳の原因を探る手掛かりと、その対策について話してみたいと思います。
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(株) 大賀薬局ライフストリーム 漢方カウンセリング (担当) 梅川
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