コラムCOLUMN
現在、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化によって、世の中では多くの活動が、自粛を余儀なくされています。そのため、以前のように外に出て体を動かしたり、親しい人とゆっくり会って接する機会なども大幅に減少し、心身に悪影響を及ぼす〝健康二次被害″の問題も深刻化しています。
自粛生活が体の衰えを加速させる
外出を控えることにより生活が不活発になり、頭や体の働きが低下してしまう状態の事は、〝生活不活発病″ともよばれていて、その中でも特に、高齢者の体力低下の加速につながる「フレイル(虚弱)」状態が心配されています。
フレイルは、加齢に伴って筋力や認知機能などの、心身の活力が低下した状態をあらわす言葉として使われており、身体的要因のみならず、精神的要因、社会的要因を含む、多面的な要因から成り立っていると考えられています。
フレイルに関する詳細については、以下の記事をぜひ参考にして頂ければと思います。
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コロナ禍を乗り切るフレイル対策
また、フレイルは病気ではなく、心身の状態をあらわす概念なので、自分自身の力で、予防や症状の改善に取り組むことが可能です。
日頃からできる、心身の機能低下への対策や意識には、以下のようなことがあります。
◆毎日、やることの計画を立てて行動する。家庭内での役割・担当などを持つ。
◆生活リズムを整える。健康を維持するための規則正しい生活を心掛ける。
◆適度に体を動かす意識を。掃除、洗濯、料理、ガーデニングや草むしり、部屋の模様替えや片付け、テレビを見ながらのストレッチや軽い体操なども、立派な運動になる。
運動することで、夜は睡眠欲求も高まり、質の良い睡眠ができて、免疫力も向上する。
◆一人暮らしの方などは孤立せずに、電話やSNSなども活用しながら人との交流をはかる。
◆体力、そして、筋肉をきちんと維持するための栄養、特にタンパク質をしっかりと取る。
(フレイル対策における食事の重要性は、以下の記事をご一読頂ければ理解が深まります)
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筋力低下が招く「サルコぺニア」と「ロコモティブシンドローム」
それから、身体的なフレイルの中でも、特に気をつけなければならないのが、筋力の低下による「サルコぺニア」や「ロコモティブシンドローム」といった症状です。
以下、このことについては簡単に説明をさせて頂きます。
『サルコぺニア』
〝サルコぺニア″は、ギリシャ語の筋肉(サルコ)と喪失(ぺニア)を組み合わせた造語です。
加齢や病気などで、筋肉量が減少してしまったことにより、筋力の低下、および、身体機能の低下が生じた状態のことを指しています。
歩くのが遅くなったり、握力が弱くなったりなどといった形で、症状があらわれてきます。サルコペニアには、痩せている人に限らず、筋肉が減ったところに脂肪が増えている運動量が少ない肥満の人、いわゆる〝サルコペニア肥満″の人も多いので注意が必要です。
『ロコモティブシンドローム』
〝ロコモティブ″という言葉は、運動器、または移動する能力という意味で、ロコモティブシンドロームは、別名で〝運動器症候群″とも言われています。
骨、関節、筋肉、神経などの運動器の障害により、移動機能に低下が起きた状態のことです。
運動器障害は、関節の痛みや、その可動域に制限を生じて筋力を低下させてしまうとともに、バランス機能や歩行機能も低下させてしまい、日常生活に支障をきたします。ロコモティブシンドロームは、骨なら骨折や骨粗鬆症、関節なら変形性の関節症、筋肉ならサルコペニアなどがその原因に該当します。
以上のことから、サルコペニアはロコモティブシンドロームの1つだということが分かりますが、どちらも筋力を向上、または維持させることが、その予防につながるため、先に述べたフレイル対策と同様に、家の中で座っている時間をできるだけ減らしてこまめに立ち上がったり、近くに軽い散歩に出てみたりと、日頃から無理のない範囲で体を動かす意識を持つことが、とても重要だと考えます。
ちなみに、国が推奨する1日の歩数量の目安となる数字は、65歳以上の男性で約7,000歩前後、女性で約6,000歩前後と言われています。
毎日、やることの計画を立てて行動し、日々の掃除、洗濯、料理、部屋の片付けや軽い体操等で適度に体を動かすことだけでも、十分その目安となる歩数に近づけることが可能です。
フレイルに対する漢方薬の有用性
フレイルの症状改善には、一般的に、薬を使わないことが基本となります。まずは運動をしたり、食事で栄養をとったり、人とのつながりを絶やさないようにしたりと、現在の生活習慣の見直しを図りながらフレイルの症状改善につなげることが最も大切です。
しかしながら高齢者においては、食事に偏りがあったり、量が少なかったりと、本来、生活の上で摂取すべき栄養素が不足しがちになってしまいます。
そうした栄養素の補完などを中心としたフレイルの改善に有効なのが「漢方薬」です。
現在、漢方薬の効果については、高齢者の知力や体力を向上させ、生活の質を改善する効果など、続々とその臨床研究の結果が報告されてきています。
その中でも代表的な処方をいくつかあげるとしたら以下のようなものがあります。
『人参養栄湯』
12種類の生薬の組み合わせから構成されている処方で、弱った体に不足しがちな栄養物質を補いながら、意識も活性化してくれます。筋力の低下、食欲不振、物忘れ、不眠や不安感、咳、体の冷えや乾燥など、加齢による虚弱の進行に対して、栄養・免疫・感情のあらゆる方面から効果を発揮してくれる漢方薬です。
『牛車腎気丸』
漢方では、人の生命エネルギーのことを〝腎気″と言います。この腎とは、腎臓だけでなく、内分泌系、免疫系、生殖系、成長ホルモンをも含む概念で、加齢によって人の体の様々な箇所にあらわれてくる虚弱を、〝腎″の弱りから来る「腎虚」という症状で捉えていきます。牛車腎気丸は、この腎虚を補う代表的処方の八味地黄丸に、「牛膝」と「車前子」を加えたもので、特に、サルコペニアによる筋力低下と痛みの改善には多くの症例が上がっています。
その他にも、多くの臨床実験が行われ、そのエビデンスが重視されて、日本老年医学会などにより編集された「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」に掲載されている、「抑肝散」「半夏厚朴湯」「麻子仁丸」「大建中湯」「補中益気湯」なども、フレイルによってあらわれてくる顕著な症状に応じて使い分けながら、数多くの医療機関で処方されています。
さらに、高齢者においては、いくつもの慢性病を抱えて、たくさんの薬を飲むことで起こる副作用が懸念される〝ポリファーマシー(多剤服用)″の問題に関しても、1つの処方で多くの症状が改善できる可能性を秘めた漢方薬に大きな注目が集まっています。
今、こうした漢方薬の活用が、医薬業界のみならず、現在の日本の超高齢化社会の問題点を解決する、一つの糸口になるのではないかと期待されています。
★カウンセリングについて★
気になる症状の改善や緩和に適した、漢方薬や健康食品を、きちんとセレクトするために、カウンセリングにはしっかりと時間をかけて対応させて頂きます。さらに症状の根本的な原因となる部分を認識するために、陰陽五行体質判定システム(税込1,000円)の活用による漢方カウンセリングも、ご希望に応じて行っております。
あなたのこれからの過ごし方が変わってくるかもしれません。
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福岡市中央区天神2丁目11-3 ソラリアステージビルM2F(中2階)
TEL 092-733-7231
(株) 大賀薬局ライフストリーム 漢方カウンセリング (担当) 梅川
書き手
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