コラムCOLUMN
人の体は、たくさんの細胞の入れ替わりによって構成されていて、その栄養素はすべて食べたものからでき上がっています。
このことからも、私たちは日々の健康について考える上で「普段から飲食をしているものが、細胞の質に影響を与えて様々な病気を起こしたり、あるいは健康を支える元気の源になったりと、その人の寿命をも左右したりする」ということへの認識がとても大切だと感じます。
「医食同源」という考え
〝病気の治療を行うことも、毎日の食事を行うことも、生命を養って健康を維持するために欠くことができないもので、その根源は同じである″という意味をあらわした「医食同源」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この言葉は、古くから中国にある〝薬も食物も源は同じで、普段から体に良い正しい食材を食べていれば、薬も必要なくなる″という「薬食同源」の考えをもとに、日本で作られた造語とされており、〝薬″では化学薬品と誤解を生じるので、薬を医に代えて「医食同源」という言葉として広まったといわれています。
また、古代の中国には、薬を用いて治療する内科医的な「疾医」、メスを用いて治療する外科医的な「瘍医」、動物を治療する「獣医」、食事で健康を調整し治療にあたる「食医」と4種類の医師が存在しており、その中でも最も重要視されていたのが「食医」だったそうです。
いまの日本においても、健康診断での各検査数値の異常や、色んな生活習慣病の診断が下されると、まずは、食事療法や運動療法などを中心に始めていくことからも分かるように、健康管理の中でも〝食″はその最も根底に位置しています。
常日頃からの健康の維持や、体質の改善を行うためには、体調や体質に応じて栄養を考えた食事をとったり、節制をしたりすることで、人間本来の自然な回復力を高めることができる、いわゆる「食養生」の実践が大切です。
自然と調和し季節に寄り添った「食養生」
食養生の大まかなポイントとしては、総じて、〝季節に合わせたものを食べる″〝体質に合わせたものを食べる″〝食べ過ぎない″といった3つのことがあげられます。
さらに食養生には、「医食同源」の他にも、いくつかの基本となる考え方が存在します。
◆『一物全体(いちぶつぜんたい)』
1つの物を丸ごと食べるという意味です。例えば、野菜なら皮も根も葉も丸ごと全部、穀類なら精白されていない物を食べることにより、その部分に存在する栄養素をすべて頂くことが可能となります。
まとまりがある個体は、生命力を維持するための栄養バランスも優れているため、こうした食べ物を1つでも食卓に取り入れてみようという考え方です。
英語ではよく〝ホールフード″という言葉が同じ意味合いで使われており、さらには、世界中で問題となっているフードロスの削減にもつながることでも注目されています。
◆『身土不二(しんどふじ)』
「身体と土は二つにあらず」、つまり、人の体と人が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという意味で、その言葉の起源は、昔の仏典の中にあります。
食に関する思想においては「人はその土地で、その季節にとれたものを食べて、生活するのがよい」という考え方のもとで、この言葉が使われています。
その土地の風土や季節、あるいは気候などによって、体にあった食べ物は変わってきます。寒い地域では体を温めるものがとれ、暑い地域では体を冷やすものがとれます。それはもちろん季節によっても違います。
例えば、暑い沖縄では体を冷やすゴーヤの栽培が盛んです。それから季節を例にとって言えば、乾燥が激しい秋の時期には、梨などの体を潤す作用の強い果物が旬を迎えます。
人はその土地柄や、季節にあったものを食べられることにより、健康でいられると考えます。
また最近では「地産地消」という言葉が、「身土不二」とほぼ同じ意味で解釈されることがありますが、地産地消にはその土地にないものや、不足している作物を持ち込んでビニールハウスなどで育てて広める場合も含むので、少し意味合いが違ってくるものと思われます。
それから、このような考えや思想に加えて、食材にあるそれぞれの効能・効果を活かして作られる、食養生の料理のかたちのなかに「薬膳」というものがあります。
ここではその詳しい理論についての話は省略しますが、薬膳とは、東洋医学(中医学)の概念をもとに、その時々の季節や、食べ物の持つ性質や味が、体に与える影響などを様々な角度から考えて、食材や漢方の原料となる生薬を組み合わせて作り上げる料理のことです。
薬膳という言葉を聞くだけで、やや難しそうな、薬草の臭いが漂うようなイメージを持たれる方もたくさんいらっしゃると思いますが、近くのスーパーなどで、身近なその季節の旬の食材を買ってみたり、その日の体調を考えて購入したもので食事を作ったりするだけでも、手軽でおいしい食養生としての薬膳は、意外と簡単に成立させることが可能です。
サプリはあくまでも補助食品
次に、ここでサプリのことについても、少し触れておきたいと思います。
健康維持のために、何らかのサプリメントを愛用されている方は数多いと思います。
「サプリメント」という言葉は、もともと〝補足″や〝補うもの″という意味からきており、食生活で足りないものを補ったり、余分な栄養の吸収を抑えたりする、健康を補助するための食品のことを指しています。
世にある無数の健康食品やサプリと言われるものの中から、できるだけ良い品を選ぶには、
包装されているパッケージや一緒についている添付文書に
1.サービスセンターやサポートセンター、フリーダイヤルなどが明記されているか
2.原産国や原産地、および原材料の調達方法などが明記されているか
3.各成分量の明記はもちろん、品質管理についての詳細が書かれているか
などに目を向けてみることがポイントだといわれています。
特にサプリには、生薬や野菜、果物等と同じく、その原産地がとても重要なものがあります。
例えば、滋養強壮や精力剤で有名な「マカ」は、ペルーのアンデスの高地で育ったものしか、その効果はあまり期待できません。
原産国の特産物は、もともと、その土地特有の土壌と、そこでついた菌なども含めて食用としての効果を発揮するものであって、他国の土壌では困難です。別名マレーシア人参といわれる「トッカントアリ」や、朝鮮発祥の「高麗人参」なども、これと同様のことが言えます。産地が別の国であるものには、それほど期待しないほうがよいかもしれません。
このように、その様々な特長を活かして加工され、体に不足しがちなものを補う働きを持つサプリではありますが、本来の、日々の食事を意識して養生を実践することで、十分な栄養のバランスや健康の維持ができていれば、摂取する必要性はないものとも考えられます。
仮に、「これさえ飲んでいれば」とサプリばかりに頼ってしまい、食生活や生活習慣を見直すことを怠っていれば、毎日の健康の維持や体質の改善などは、とても望むことなどできません。
食は健康の基本。そして生きる楽しみ
再度、申し上げますが、人の体はすべて食べたものからでき上がっています。
食事がきちんとしていなければ、お薬も効果を発揮しませんし、サプリも意味がありません。
毎日の食事の中で、その食材の性質や味の効果を知って口にしたり、旬のものを取り入れたり、食べ過ぎないように心掛けたりすることは、日々の健康の増進にも大いに役立ちますし、人間本来の自然治癒力や病気からの回復力も高めてくれることになります。
また、食事をすることは生活をする上で、大きな楽しみの一つでもあります。
好きな食べ物を心ゆくまで味わったり、美味しい食事に出会えたりした時には、日頃の疲れやストレスも和らいで、とても幸せな気分になるものです。
健康な体で、色んなことを目いっぱい元気に楽しむためにも、こうした心を満たす食事も、過度にならないように週1、2回程度にとどめておいて、時には心と体のバランスを考えた食養生を意識して、実践してみることをおすすめします。
★カウンセリングについて★
どんなお薬や健康食品も、日頃の生活習慣の改善や、食生活の見直しなどがベースになければ、その効果を十分に発揮することはできません。当店では生活習慣の改善や簡単な食養生の知識などもアドバイスしながら、ひとりひとりの体質にあった漢方薬はもちろん、健康食品や市販薬のご提案もさせて頂いております。
また、気になる症状の改善や緩和に適した、お薬や健康食品をきちんとセレクトするために、カウンセリングにはしっかりと時間をかけて対応させて頂きます。さらに症状の根本的な原因となる部分を認識するために、陰陽五行体質判定システム(税込1,000円)の活用による漢方カウンセリングもご希望に応じて行っております。
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