コラムCOLUMN

2020.6.1梅雨に起こりやすいむくみと不調について

梅川 哲朗

大賀薬局 ライフストリーム 漢方薬 梅川 哲朗

3

10

梅雨に起こりやすいむくみと不調について


梅雨は、1年で最も気象ストレスを受けやすい時期


ジメジメした気候で雨の降る日も多くなるこの季節、何となく気分も体も重だるい感じになりますよね。

梅雨は、日本など東アジアの一部で特有の雨期の一種で、気圧が低く湿度が高い状態が続き、雨の日が多いために日照時間も少なくなり、日によっては寒暖差も大きくなる、1年で最も気象ストレスを受けやすい時期でもあります。

もともと周りを海に囲まれ湿気が入りやすい日本では、この時期さらに湿度が高い環境になると、人の体は水分が蒸発しにくくなり、汗や尿での充分な排出ができずに余分な水分や老廃物が溜まりやすくなって、「むくみ」という症状が起こりやすくなります。

むくみは、体内の水分調整がうまくいかないことにより、年中起こりうる症状なのですが、この時期は特に多いんです。






むくみの原因と予防、対策


以前から持病を患っていたり、腎機能、心機能、肝機能、甲状腺等に不安のある方のむくみは、すぐに病院の受診が必要ですが、それ以外のほとんどのむくみは、高い湿度や強い湿気による外因にプラスした日頃の生活習慣によるものが主な原因だと考えられます。

例えば、コンビニ食ばかりで塩分摂取が過多になり体が血中濃度を薄めようと水分をため込んだり、お酒の飲み過ぎで血液中のアルコール濃度が上がり血管が拡張して水分があふれ出たり、デスクワーク等でずっと同じ姿勢が続き血流とともに水の巡りが悪くなったりすることで、むくみは断続的にその姿を現します。

これらの予防や対策としては、普段から塩分やアルコールの取り過ぎを意識的に控えるのはもちろんのこと、マッサージやストレッチなどの適度な運動や、入浴を習慣づけて血流を促進し、クーラーなどで体を冷やし過ぎないように心掛けていくことが大切です。


また、この梅雨に特に発生しやすい湿気のことを、漢方の言葉では「湿邪」呼んでいて、この湿邪は、むくみ以外にも様々な不調を引き起こします。

こうした湿邪に最も侵されやすい臓器は、胃や消化器系などで、食物を消化して栄養を巡らせる臓器が弱ることで、重だるい疲労感など全身の症状が徐々に出始めてきます。そして更に湿邪は下痢、関節痛、頭痛、水虫などの様々な部位のトラブルの原因となっていきます。

東洋医学の考え方では、むくみなどの湿邪により体の各部位に起こる様々な症状を、水の巡りが停滞したり偏ったりした状態で生じた「水滞」または「水毒」という概念で捉え、それぞれの部位や体質に応じた漢方薬を、効果的に投与することで改善へと導いていきます。






むくみの改善に効果的な漢方薬


代表的なよく使われる漢方薬の中には、体内に滞った水を追い出し消化器官を立て直す蒼朮や白朮といった「朮」という生薬を中心に、湿邪を除去する「茯苓」「猪苓」「沢瀉」などの生薬を上手に組み合わせた処方が多くみられます。
湿邪が原因の頭痛なら「苓桂朮甘湯」や「五苓散」、関節痛なら「桂枝加苓朮附湯」や「防己黄耆湯」、消化不良や下痢なら「胃苓湯」や「六君子湯」、ホルモンバランスも乱れていれば「当帰芍薬散」などの漢方薬がそのポピュラーな一例として挙げられます。

実際、最終的な処方の選定に至るまでには、細かい問診等をしっかりと行うことによって、どの臓器が弱くてむくみなどの症状を生んでいるのかを、きちんと探っていくことが重要なカギとなってきます。

ちなみに、靴下を脱いだら少しあとがついたくらいのむくみらしきものは、正常な範囲ですので、ご安心を。(笑)


最後に梅雨は、いやな季節というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、自然の中で生きている私達にとって、畑や稲作に必要な水をもたらし、夏の水不足を補うための大切な季節であるということもお忘れなく。





漢方薬相談のご予約はこちらから

いいね 10
3

コメント

記事についてコメントする

ニックネームとコメントを
入力してください。

ニックネームを入力してください。

コメントを入力してください。

コメントを投稿する
  • 恵の雨

    湿気の多い時期は不調になるので嫌だったのですが、

    自然の流れや植物の成長への大事な雨であると気づいてからは、恵の雨であると、受け止め方が変わりました

    漢方のお話は、湿度による不調も自然の移り変わりも全てくるめてのお話しで心が豊かになります。ありがとうございます。

  • 大賀薬局 梅川

    きみちゃん 様へ

    当コラムにコメント下さり有難うございます。

    予測できる範囲の原因と対策についてお伝えさせて頂きます。


    過去に病院等で、浮腫の原因について、お薬の副作用や検査による器質的原因などの診断が下されず、これといった原因が不明瞭な場合は、夏の足とおっしゃっていることもあり、体の水分代謝のバランスが崩れがちになり、水の偏在(水分のかたより)が起きていることが考えられます。

    いつもより多く水分をとりがちな暑い季節には、熱中症などの脱水対策として、必ず十分な水分の摂取が必要になりますが、同じような年齢・体格の方でも、その代謝力には、体質により個人差があります。

    対策としては、例えば、1日に2Lなどの「これだけの量の水分を…」と決めてとるのではなく、たくさんの水分をとって内蔵を冷やしたり、その機能を低下させることがないように、のどが渇いたなと思ったら、こまめに少量の水分をとるように心掛けて、内蔵の負担を軽くして、水分のかたより(水の偏在)を起こさないようにするとよいでしょう。
    それから、できるだけシャワーよりもお風呂に入るようにして、自分なりにでも足のマッサージをしてあげるのもよいでしょう。

    それから昨年(2020年)の7月1日に、こちらに執筆しましたコラムも、ご一読下さり参考にして頂けると幸いです。


    病院でも原因が特定されない場合は、一度お近くの、ゆっくり漢方相談ができる薬局などで、きちんと体質判定をして頂けますと、さらによい対策が見つかるものと思われます。

  • きみちゃん

    55年前に子宮外妊娠の手術をしてより
    夏足の浮腫で困り対策の靴下を履いています
    1日で1キロ位体重増加の時もあります
    対策を教えてください


梅川 哲朗

ご相談は私までお声がけください!



梅川 哲朗 (登録販売者・九州中医薬研究会会員・国際中医臨床薬膳師)
所属店舗 ライフストリーム

ご相談の際は、店舗宛TEL092-733-7231までご連絡ください。
店舗の詳細はこちら



色んな症状を持ちながら診療では病気ではないと言われて悩むお客様方にお役に立ちたく、日々、中医薬診断の学びと実践に努めています。細かい症状などを伺って体質を判定し、お客様個々に合った漢方薬や市販薬の上手な活用法をご提案しております。お気軽にご相談下さいませ。

お問い合わせCONTACT